後悔しない美容外科や医師を見つけるために
美容外科医は、しっかりと技術を身につけて、患者様としっかり向き合っていたら、感動の瞬間に毎日のように遭遇できる職業です。私もそこに大きなやりがいを感じています。
ただ、美容外科医には色々な経歴の方がいます。
アメリカと日本の美容外科医の現状
今後、美容外科医を選ぶ際に、経歴を見て迷うことがあると思うので、その際の判断材料になるよう、美容外科に関係する資格等について説明いたします。
アメリカの美容外科医の現状
アメリカでは、顔を扱うのは頭が良い医師であるべきだという考えが浸透していて、成績上位5%程度に入っている人しか形成外科の道に進むことができず、さらにそこから美容外科の道に進めるのはその中でも選ばれし人のみです。
ですから、形成外科の資格を持たない美容外科医は基本的には存在しませんし、美容外科医は医師の中でも名誉職です。
日本の美容外科医の現状
しかし、日本は仕組みが根本的に違います。
そもそも進路を選ぶ際に成績は全く関係ありません。
また、美容外科は名誉職というよりも、”当直なく稼げる”という印象があったりするためどちらかというと”真面目ではないタイプの人”が多い傾向にあります。(誤解を与えたらすみません)
それもあって形成外科の中でも、美容外科に進むと宣言しづらい雰囲気があります。
そして日本には医局という組織が存在します。
形成外科医の多くは医局の上司の指示で、1年あるいは何年かおきに関連する病院を回る形で働いている人が多いです。病院を自分で選べないだけでなく、専門分野(小児、癌切除後の再建、眼瞼下垂等の専門分野)すらも自分で選べないことも珍しくありません。
日本の形成外科や美容外科の資格について
現状をお伝えさせていただいたところで、日本にある形成外科や美容外科の資格等について説明させていただきます。
形成外科での勤務歴がある→傷を綺麗に縫うのが得意、解剖に詳しい
形成外科医が行う主な手術は、怪我で負った傷の縫合、皮膚のシコリやホクロの切除、顔面骨骨折の治療、癌の切除で欠損した部位の再建、そして眼瞼下垂の手術等です。一般的に形成外科医といえば、傷を綺麗に縫合するのが得意で、体表の解剖に詳しいという印象があります。
学会の正会員について
美容外科に関わる学会には形成外科学会、美容外科学会があります。
美容外科学会には2つの組織があり、一つはJapan Society of Aesthetic Surgery(JSAS)で、もう一つはJapan Society of Aesthetic Plastic Surgery(JSAPS)です。後者は直訳すると日本美容形成外科学会で、形成外科学会から波及した学会であり、国際美容形成外科学会の認定を受けている学会です。
形成外科正会員から構成された美容外科学会です。
以下にそれぞれの正会員になるための条件などを記載いたしました。
形成外科学会の正会員≒形成外科に勤務歴がある
指導医レベルの人の推薦が必要なため、形成外科医として働く医師のみ入会が可能です。あくまで会員ですから知識や技術を保証するものではありません。
美容外科学会(JSAS)の正会員→技術の保証にはならない
他の正会員から推薦をもらい、年会費を支払うことで特別問題がなければ正会員になれます。あくまで会員ですから知識や技術を保証するものではありません。
美容外科学会(JSAPS)の正会員→形成外科の正会員であることが前提
形成外科学会の正会員として形成外科で勤務歴がある医師で、他の正会員からの推薦をもらい、年会費を支払い後、審査に通れば正会員になれます。あくまで会員ですから知識や技術を保証するものではありません。
形成外科医の専門医について
形成外科専門医は形成外科医として4年以上勤務していて形成外科領域の幅広い知識を有している
4年間形成外科医として病院で勤務した経験があり、合格率約90%の試験(口頭試問、筆記試験)に合格した場合にもらえる資格です。
論文を最低1個発表した経験があったり、10個の症例に対する詳しいレポートを提出したり、経験した300症例の一覧を提出する必要があります。専門医は形成外科領域全般の知識や手術経験があることを証明するものになります。
専門医でも鼻を形成する手術の経験がない医師は少なくありません。
ただ、あくまで私の意見ですが形成外科専門医は真面目な方が多い印象です。
美容外科専門医(JSAS)は大手美容クリニックでの勤務歴5年以上
5年間美容外科医として大手美容クリニックに勤務歴があり、筆記試験と口頭諮問に合格したら取得できる資格です。
美容外科専門医(JSAPS)は正会員歴3年以上で美容外科の知識を全般的に持っている
学会の正会員になった後、3年以上経過し、試験に通過したら取得可能。美容外科手術10症例のレポート提出が必要。
正直なところ、学会の正会員には推薦をもらって年会費を支払えばなれます。
専門医は、一定期間その分野で働いていて、満遍なく知識や手術の経験があることの証明になります。
残念ながら手術が上手かどうかまでは判断できませんが、一定期間その分野で真面目に働いていないと得られません。
医学博士は医療の特定の分野のマニア
医療系の大学院に所属し、医療のある分野について一定期間研究をして、その研究結果についての論文を発表し、それが受理された後にもらえる称号が医学博士です。
医学博士になるには一つのかなり狭い分野にマニアックになる必要があります。ただし美容外科と直接的な関連は薄いことがほとんどです。
海外への留学歴がある医師は世界標準の術式を知っていることが多い
鼻整形が多い国といえば、韓国、トルコ、アメリカあたりが多いです。
トルコやアメリカで鼻整形を専門にしている医師は耳鼻咽喉科出身の医師が特に多いです。鼻整形が発展した歴史が国ごとに大きく異なり、日本で一般的に行なわれている鼻整形の方法は世界標準とは相違があると言わざるをえません。海外に学びに行っている医師の意見も聞いてみると、手術を検討する上で、また別の考えが生まれるかもしれません。
まとめ
まとめますと、紹介を受ければ特に知識や技術に関係なく正会員になることができます。
専門医は一定期間の勤務歴と一定レベルの知識を保証するものです。一般的に、形成外科専門医は真面目な医師が多い印象ではあります。ただ技術を評価する仕組みは少なくとも今の日本にはありません。
美容外科を志した時、直接美容外科に進む道、一般外科等の他の科から美容外科に進む道、形成外科を数年ほど経験してから美容外科に進む道、形成外科専門医をとってから美容外科に進む道、形成外科のある分野を極めてから美容外科に進む道、色々な選択がございます。
正直、日本の美容外科医はどんな経歴の医師でも、一度は上記のどの道を選ぶべきか迷う時期を経験しています。
そして、基本的には自分が選んだ道を正当化するため”形成外科は美容外科と関係ない!”と言ったり、”形成外科専門医がない美容外科医は皆いい加減!”といった自分以外を批判するような情報が飛び交っています。
しかし、どの道を選ぶべきか、いつ美容外科に進むべきかに正解はないと思います。
保険診療に疲れた、当直のない科がいいという後ろ向きな理由で美容外科の道に進む医師もいないこともないですし皆が志高いわけではないと思います。
ただ、美容外科医は、センスや手術の腕があれば患者様の幸福に大きく貢献できる。美容外科は感動の瞬間が最も多い科だと信じています。これ以上やりがいのある科はないかもしれません。
ちなみにですが、私は形成外科を経験した後、専門医をとらず、鼻整形で有名な海外の先生から技術を学ぶ選択をしました。この選択をしていなかったら今の私はいませんから後悔はありません。
皆様が一度きりしかない人生を実りあるものにするために美容整形を受けられるのと同じように、僕ら医師も一度きりしかない人生、それぞれの医師がベストだと考えるタイミングで美容外科に進んでいるのはないでしょうか。